一般歯科医プログラム


 本コースは、診断編、治療T編、SWA編の3コースから成り立ちます。次回の診断編は、2010年4月22日からの開講予定しております。なお、現在は実際の患者さんの診療を通して臨床実習に重きをおいた新企画のみ開講中です。それぞれの内容については参考資料T、Uをご参照下さい。

2010年度診断編開講案内

I.コース概要および本コースの到達目標と研修内容

 最近、在ってはならないとされている医療過誤の報道をよく耳にします。これは氷山の一角との声もありますが、確実に社会の医療に対する考え方に変化が現れてきているのは事実のようです。すなわち、インフォームド・コンセント、ディスクロージャ、パラダイムシフト、EBM、あるいはアカウンタビリティなどの言葉で代表されるように医療の概念そのものが変わりつつあります。その一つに、問題・患者志向型の医療(Problem(patient) oriented system;POS)があり、現在、歯学部の学部教育にも導入が積極的に図られています。
 本研修会は、このような今日の医療概念の変遷をふまえ、矯正治療における問題・患者志向型(POS)の診断について演習を通して学ぶものです。さらに、矯正臨床で必要な歯の移動、顎の移動を理解する上での基礎知識(成長発育、顎運動機能、他科との関連等)についても触れ、ホームドクターとして適切な助言、診断を下すことができるようになることを目的としております。さらに、パソコンを用いた画像処理を行い、その報告を通し、デジタルカメラの歯科領域での応用、デジタル画像の取り込み、デジタル画像の処理・修正、矯正用資料の取り方、プレゼンテイショの仕方、パソコンソフト等の理解を深めます。

II.研修内容概略

1.オリエンテーション
 21世紀の矯正臨床の方向性を踏まえながら本研修の特徴、進め方についての解説。

2.研修講義内容について
 1)研修達成度確認のための問題演習
 研修前の各自の矯正臨床に対する考え方、矯正学の知識量を認識し、研修後の成果
 と比較していきます。
 2)矯正治療とは
 矯正治療が社会的に認知されている昨今の社会情勢および最近の歯科矯正学の進歩、
 発展について触れます。
  (1)矯正治療と社会の関わり
  (2)矯正治療の現況
 3)POS(問題志向型診断)について
 社会の医療に対する考え方の変化に呼応した診断方法について考えます。
(1)問題志向型診断とは
   ・プロブレムリストの作成から治療計画立案までの概論
   ・問題解決のための治療方法の検討
   ・各治療方法の利点・欠点の検証
   ・治療結果と予後の予測
(2)問題点発掘の方法について
   6つの項目からの検証
   ・顔貌
   ・歯、歯列素材
   ・近遠心関係
   ・垂直関係
   ・Transverse
   ・その他(成長発育、顎機能、歯周疾患、悪習癖等)
(3)診断要項、治療目標、治療方法の立案
   ・リスク & ベネフィットとは? Treatment alternatives とは?
(4)最終治療法決定方法について
   ・prediction の意味は?
 4)デジタル画像の扱い方
  (1)デジタルカメラの扱い方
  (2)デジタル画像の扱い、その処理の仕方(Photoshopの使い方)
  (3)症例報告に必要なPowerPointの使い方
  (4)パソコンによる症例報告の実際
(5)診断資料の作成の基本(DTP作業について)

3.研修演習、実習内容について
 POS(問題志向型診断)を実践していく上での基本となる矯正用診断資料の意義、作成方法について再認識し、その実際を学んでいきます。
 1)矯正用診断資料の意義とその作成法(デジタル画像の扱い方を含め)
  (1)顔面、口腔内写真
  (2)矯正用診断模型
  (3)頭部X線規格写真分析法
  (4)Set-up模型
  (5)治療ゴールシュミレーション
 2)診断演習法
 米国ワシントン大学で行なわれている手法、ABO提示症例を参考にしながらプロブレムリストの作成から治療目標の設定、最終治療方法決定に至るまでの実際の診断演習を行ないます。さらに、パソコンを用いての症例報告の仕方を学んで頂きます。
 3)ワイヤーベンディング練習
 第1回から11回を通して、基本から角のワイヤーに至るまでの屈曲練習を行いますが、多くは宿題になります。研修会では、屈曲の意味、ワイヤの力学的特性などの講義が中心となります。


参考資料I

治療I編:PhaseIの治療編概要

I.コース概要および到達目標

 矯正治療の最終的な目標は、乳歯列期から混合歯列期を経たのちの永久歯列における正常な咬合関係の獲得と言えます。したがって、 早い時期に不正咬合が認められ、かつその不正咬合の改善が将来の永久歯咬合の育成にとって必要と診断されたならば、矯正治療の開始時期は早まると考えられます。一般的にこのような早い時期の治療は、治療の内容により予防矯正preventive orthodontics(プリベンティブオーソドンティクス)、抑制矯正interceptive orthodontics(インターセプティブオーソドンティクス)などと呼ばれ早期治療Early treatment あるいは第一期の矯正治療として捉えられています。
 本コースでは、診断編で学んだ問題志向型の診査、診断に基づく治療方針、治療計画によって第一期治療が必要となっ場合の矯正装置について、その特徴、選択方法、使用方法を学ぶものであります。また、同時に第二期の矯正治療で使用するマルチブラケット装置であるSWAについては、その概念を学びます。なお、デジタルの知識、技術を治療編においてもパソコン、デジタルカメラ、メール等を活用し、その利用方法を一層理解して頂き、画像の処理、パソコンの使い方に慣れ、PowerPointを用いて症例報告をして頂く予定です。

II.コース内容

1.講義
1)各時期の不正咬合の特徴とその対策
  ・乳歯列、混合歯列(前期、後期)、永久歯列(young adult、adult)
2)矯正治療の種類について
  ・早期治療、予防矯正、抑制矯正、限局矯正、MTM、本格矯正、成人矯正
  ・第1期治療(第1段階治療)、第2期治療(第2段階治療)
3)矯正装置の種類とその意義について
  ・Removable(可撤式)とFixed(固定式)appliances(装置)
  ・Orthopedicな装置とOrthodonticな装置
  ・Comprehensiveな装置とlimitedな装置
4)保定処置について
  ・保定の意義
  ・保定の種類と装置の種類
5)Comprehensive orthodontic appliances
  ・各種装置の歴史とその役割
  ・SWA
2.問題志向型診断の復習とその実践

3.装置製作に際しての基本技工
1)Fitting bands & cementation: seamless bands, prewelded bands
2)Bonding: conventional, reinforced glass ionomer cements
3)Bending wires: retainer wires
4)Soldering: free hand method
5)Handling resin: retainer fabrication

4.デジタル画像の基礎と応用
1)デジタル画像の基礎
2)Photoshopによるデジタルカメラ等の画像の加工・修正・処理法の習得
3)PowerPointによる症例報告の実際


参考資料II

SWA編

I.コース概要および本コースの到達目標


 歯科矯正学は,顎顔面の成長発育を基盤とした形態的、機能的個性正常咬合の確立をめざすものであり、矯正治療の最終的な目標は、乳歯列期から混合歯列期を経たのちの永久歯列における正常な咬合関係の獲得と言えます。したがって、乳歯列期、混合歯列期の治療では、初診時の不正咬合が将来の永久歯咬合の育成にどのような関わり合いをもつかを検討したうえで、治療目標、治療計画を立てる必要があります。しかし、第一期治療により顎口腔系の環境を整えたとしても,将来の正常な永久歯列咬合を保証するものではありません。後続永久歯萌出後の永久歯列に何らかの不正が存在することは多いにあり得ることです。この場合には,第二段階の治療として本格矯正といわれるマルチブラケット装置にて最終的な個性正常咬合の獲得を図ることが必要になります。
 本コースでは、この本格矯正治療を行うための装置としてSWAを取り上げ、問題志向型の診査、診断に基づく治療方針、治療計画によって導かれた治療方法を実践していく上で必要となるマルチブラケット装置として022 slot を用いてenmass sliding mechanics によるSWAの特徴、使用方法(typodontにて)について学ぶことにあります。さらに、パソコンを用いてタイポドント上での歯の動きを確認すると同時に、ケースプレゼンテーションを各自行い、その報告を通し、資料の取り方、診断の仕方、治療計画立案等の理解を一層深め、同時にデジタルカメラ、デジタル画像の処理、DTP作業、PCを用いたプレゼンテイションなどについて知識、技法にもさらなる飛躍をして頂けるよう考えております。また、治療後の長期経過症例を供覧し、保定処置の重要性についても認識して頂く予定です。

II.コース内容

1.講義
1)SWA誕生までの本格的矯正装置の歴史
2)SWAの基本概念(Standard edgewise 法との違い)
3)SWAによる基本治療術式
4)保定処置について
  ・保定の意義
  ・保定の種類と装置の種類
5)長期経過症例からの評価

2.問題志向型診断に基づく治療計画とその実践

3.装置製作に際しての基本技工
1)Fitting bands & cementation: seamless bands, prewelded bands
2)Bonding: bracket siting or positioning
3)Bending wires:first, second and third order bends
4)Wire selection:
5)ligation:
6) Debanding & debonding
7) Fabrication of retainers

4.Typodontによる歯の移動をデジタル画像で捕らえ、各自パソコンでの経過報告をしながらの実習(Photoshop、PowePointを用いて)
1) Fitting bands & cementation
2) Bonding brackets
3) Rationals for tooth movement
4) Modalities for tooth movement

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